低燃費住宅に逢いに行こうinいわき

東日本大震災で被災するも「寒い日でも、暑い日でもエアコンはあまり使いません。」

――低燃費住宅に興味を持っていただいたのは、2010年のセミナーでしたね。

Tさん 今でも覚えています。ちょうど2010年の1月17日でした。今回設計を担当していただいた、真建築設計事務所の小林直昌さん(低燃費住宅いわき代表、(社)日本エネルギーパス協会 主席研究員)がセミナーを開催するというのを聞いて、当日の朝申し込んでギリギリで参加したのが初めてです。
その時に、お話ししていたのが、低燃費住宅普及の会の代表の早田宏徳さんだったのです。その時に未来の子供たちの
ことを考え、無駄なエネルギーを使わない住宅、家の燃費という考え方を聞いて、こんな家が欲しいと思ったのです。

――それから契約、着工と順調に進み、完成までもう少しというところで、3.11が来てしまったわけですね。

Tさん 外壁は出来上がっていました。内装はちょうど壁を塗れば出来上がるという完成直前で、あの日を迎えたのです。いわきも立っていられないくらい激しく揺れました。正直、建築途中だったので、被害はひどいかと思って見に行ったらヒビひとつ入っていなかったことに正直驚いたのをよく覚えています。そのあとも工事を続けていただき、なんとか2011年5月に完成して入居することができました。

日射遮蔽を考慮した設計のいわきの低燃費遊宅

――低燃費住宅で生活を始めて、1年が経過しましたが、夏・冬はいかがでしたか。

Tさん 夏は今年で2回目となりますが、とても快適です。まず湿気を全く感じなくなりました。この前はアパートだったのですが、梅雨時期はカビだらけになっていました。床面積は1・2階で30坪強ですが、リビングの上は大きな吹き抜けになっています。こういった大きなスペースを一定の温度で、一定の湿度に保つというのは一般の人が考えても難しいだろうなって思います。

――冷房機器はエアコンでしょうか?

Tさん 階段の吹き抜け部分にエアコンが1台あるだけです。夏場は本当に暑い日だけ付ける程度です。毎日ではありません。 温度設定も28℃で問題ありません。あとはシーリングファンが風を回してくれるのでとても快適です。

――子供さんはこの家を気に入っているようですね。

Tさん 風邪を引かなくなりましたね。家中どこでも温度差がないからですかね。あまり体温調整ができない子供は、よく体調を 崩していました。子供だけでなく喘息もちだった主人の症状もすっかり良くなりました。

――春・秋は冷暖房を使いますか?

Tさん いえいえ、全く使いません。アパートに住んでいるときなんて、梅雨時期も何日か寒い日があって、ストーブたいていましたよ。

――冬はいかがですか。

Tさん 冬もエアコン1台だけです。前のアパートはいくらエアコンで暖房しても上ばっかり熱くなって、足元はいつもヒンヤリ。 けどこの家はそんなことはありません。下も上も温度は一定で、床が冷たいことはないですね。冬場、友達が遊びに来た時も 「この床あったかいね。床暖房がはいいているの?」と聞かれたこともあるくらいです。

年間の光熱費は何と8万円!「冷暖房を入れずに我慢しているわけではありません。」

――冷たい空気は暖かい空気の方へ行こうとする性質があります。だから隙間だらけの家に冷たい空気が入ってくるのは、それが理由です。さらに冷たい空気は重いため足元にたまり、暖かい空気は軽いため上へと行くのです。だから皆さん床暖房を付けたがるのです。おそらく性能の悪い住宅は床と天井の温度差は10℃近く違うケースもあります。だから皆さん、床暖房を入れたがるんですよ。あれって、私に言わせれば「自分が作った家は性能が悪い」と宣言しているようなものですね。友達がこの家に遊びに来たら皆さん何とおっしゃっていますか?

Tさん 先ほど言いましたけど、「床があったかいね。床暖房?」とはよく言われます。もう一つは「トリプルサッシが珍しい!」「壁が分厚い」という感想もありましたね。

――たしかに、木製のトリプルサッシは珍しいですからね。壁も25センチはあるから、他の住宅ではありえないでしょうね。

Tさん 木製サッシの見た目の色柄も友達からは好評でしたね。また防音性も高いですね。100メートルくらい下に電車が走っているのですが、ほとんど聞こえませんね。この家のお隣は私どもの実家があるのですが、そこは良く聞こえます(笑)。静かすぎて、雨が降ってきたことに気付かず洗濯物を濡らしてしまったこともあります。

エネルギーパスで家の燃費を見える化

――この住宅のエネルギーパスがここにあります。いま日本で高性能住宅といわれている次世代省エネルギー基準(平成11年基準)と但野さんの低燃費住宅の2つのエネルギーパスがあります。
室温を20℃以上27℃以下に維持するための冷暖房エネルギー、給湯エネルギー、換気、照明の5つに必要なエネルギーを1㎡あたり何kwhの電気が必要となるかを計算して出したのが、このエネルギーパスです。
今の日本の最高基準である次世代省エネルギー基準の家は1㎡あたり200kwh以上のエネルギーが必要ですが、Tさんの家は115KWhとおおよそ半分の必要エネルギーでした。家電を除いた最終エネルギーが年間の光熱費にすると、9.5万円という評価でしたね。最終的にお支払された光熱費は年間で大体11~12万円くらいですか?

Tさん これが1年間の光熱費です。8万円くらいです。

――えっ?8万円ですか。1年間で?エネルギーパスで計算した数値より低いじゃないですか?

Tさん 通常の月は5~6000円。冬と夏は月1万円くらいですね。といっても冷暖房を入れずに我慢していたわけではありません。 快適ですし、燃費も良いし、本当にいい家に出会えてよかったと思っています。

――Tさんにそう言っていただけると我々もうれしいです。もっともっといい家を日本中で増えるように頑張ります。

ハウスデータ

仕様
 
建物仕様:木造軸組在来工法 2階建内装仕上げ:床  無垢材仕上
壁  しっくい仕上
天井 無垢材仕上
断熱:(mm)床  EPS 厚105
壁  CF 厚120+ロックウール 厚80 
天井 CF 厚400
外装仕上げ:ロックウール下地 塗り壁仕上
窓サッシ:木製トリプル(3枚)ガラス
立面図

いわきの低燃費住宅の立面図

協力
真建築設計事務所
低燃費住宅いわき